私事でありますが(その3)
柿を食っても鐘が鳴ることはなく、柿を食う前に腹が鳴る。
おいしそうな柿が生っていると天を仰いでみる。
たくさん実がなっているのに鳥に全く見向きもされない柿の木をよく見かける。
それは、渋柿だなと予想はつく。
予想はついても、手に届く距離になっているとオレンジ色の誘惑にあらがえずに手を伸ばしてしまう。
きっと赤系統は食欲を増進させる色だから致し方ないはず!
もぎたてのリンゴのような触感と口に広がる甘さ!これは甘い柿なのではと思ったのは束の間で、一瞬にして痺れたような感覚に襲われ、口がすぼまっていき声も出ぬ渋さに蹂躙されていった。
塩が甘さを引き立たせるように、甘さが渋さを引き立たせている。
恐るべし渋柿。
好奇心は身を滅ぼすというが、本当にひどい味。
鳥の味覚はどうなっているのだろうかと思いながら、青の背景のなか揺れているオレンジ色を時折見上げつつ仕事をおこなう秋の空。
(文・画像 ブルーナ春暁)